ライフ
恋愛模様を綴った安里屋ユンタ

前回はてぃんさぐぬ花をご紹介しましたが、今回は、県外の皆さんも一度は聞いたことがあるかもしれない「安里屋ゆんた」のお話をしましょうね。
竹富島の労働歌「安里屋ユンタ」
沖縄料理店や観光地で流れる「安里屋ユンタ」。沖縄都市モノレールでは、牧志駅から安里駅までの区間で聞くことができます。三線初心者もよく弾く、県民にとっては馴染みの深い曲のひとつです。一般的に広く知られているものは「新安里屋ユンタ」とも呼ばれます。曲の内容は、島の男女の恋愛模様を描いたものです。
“サー 君は野中のいばらの花か
サァ ユイユイ
暮れて帰ればやれほに引き止める
マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ”
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君は野に咲くイバラの花か
日も暮れてきたので帰ろうとすると引き止める
愛しいあなたよ
「サァ ユイユイ」「マタハーリヌ」は囃子ことばで、「チンダラ カヌシャマヨ」というのは「かわいい愛しき人よ」という意味です。元々の「安里屋ユンタ」は沖縄本島から離れた竹富島の労働歌で、実在したと言われる島の美女「安里屋クヤマ」と、彼女に惚れた目差主(みざししゅ/下級役人)が登場します。あまり知られていませんが、実は23番まで存在します。
“サァ 安里屋(あさどや)ぬ くやまによ
サァ ユイユイ
あん美(ちゅ)らさ うん生(ま)りばしよ
マタハーリヌ チンダラ カヌシャマヨ”
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安里屋のクヤマは、
素敵な美人に生まれたことよ
愛しいあなたよ
クヤマは目差主に見初められますが、彼女は嫌だと言って島の村長(与人)を選びます。5番から23番までは恋に破れた目差主の歌で、クヤマよりも美しい女性を求めて村を奔走した結果、イシケーマという上品で美しい女性と結ばれることになります。
ユンタは厳しい労働の中でも、歌で乗り切ろうとした島の人々のたくましさが感じられる労働歌なのですが、労働歌として恋愛の歌を歌うというのは、中々面白いですね。「ユンタ」と呼ばれる労働歌は、農作業中に男女交互に力強く歌います。ですので、本来は三線等の楽器による伴奏はつかないのです。それも「新安里屋ユンタ」とは違うところです。
*次回は、陽気な曲調の「ハイサイおじさん」をご紹介しましょうね。