ライフ
サキジョーグーのハイサイおじさん

複雑な時代が背景となった名曲
前回は恋唄と言える安里屋ゆんたをご紹介しました。今回は、飲んべえおじさんの「ハイサイおじさん」をご紹介しましょうね。
昨年、亡くなられた志村けんさんの「変なおじさん」の元ネタとなっている「ハイサイおじさん」。原曲はゆったりとした明るいメロディーですが、原作者である喜納昌吉さんのライブを見ると、意外にもロックな感じのアップテンポで歌われていることもあります。
1番の序盤は、少年がおじさんに話かけています。
“ハイサイおじさん ハイサイおじさん
昨夜(ゆうび)ぬ 三合ビン小(ぐゎー) 残(ぬく)とんな
残(ぬく)とら 我(わ)んに 分(わ)きらんな”
「ハイサイ」は挨拶です。女性が言う場合は、「ハイタイ」と言います。
“やぁ、おじさん 昨夜の三合瓶は残っているか? 残っていたら私に分けてくれ”
好青年かと思いきや、初っ端からおじさんにお酒を無心しています。当時は今ほど未成年の飲酒に厳しくはなかったのかもしれませんが、中々やんちゃな少年ですね。続いて、おじさんが言い返します。
“ありあり童(わらばー) いぇー童(わらばー)
三合瓶ぬあたいし 我(わ)んにんかい
残(ぬく)とんでぃ 言ゆんな いぇー童(わらばー)”
“おいおいガキンチョ やい小僧、三合ビンほどの酒 私に、残っていると言うのか? やい小僧”
この俺が少しの酒も飲み残すわけないだろう!と言い返すおじさん。かなりのサキジョーグー(酒好き)ようですね。そして、この後も、少年とおじさんの愉快な掛け合いが続きます。
実はこの曲に登場するおじさんには、奥さんが精神に支障を来たして、娘の首を切ってしまうというショッキングで悲しい過去がありました。戦後の沖縄、社会も大人も不安定だった様子が窺い知れます。また、酒飲みのおじさんとこのような会話ができるのも戦後ならではかと思わされます。面白くも悲しくもあるこの時代でなければ生まれなかった、実は深い一曲なのでした。
YouTube 喜納昌吉&チャンプルーズ - ハイサイおじさん